深夜の三人

土曜日の深夜、ただただ三人で歩いた。もう日付は日曜日になっている。目的地はあるものの、道順はうろ覚えのために迷った挙句、同じ道に再び舞い戻るなんてこともあった。一人は地図を持っていたが、全員が方向音痴のために見ることもなくなった。途中、駅で駅員に道を聞こうとして、「終電はとっくに終わりましたよーー!」と駅員に得意げに言われると、大げさに「あちゃー!」と反応する。そして駅員に道を聞いたが、あとで振り返るとそれも無意味なことだった。再び、歩き出す三人。飲み会で残った駄菓子をかじりながら歩く。口の周りも、手も駄菓子の油でベトベトしている。空気は肌を突き刺すように冷たい。三人はわずかな街頭の灯りと記憶を頼りにひたすら歩く。寒空の下、歩けば歩くほど、会話は盛り上がる。話すために歩いているのか、歩いているから話すのか。道を間違っていることがわかっても引き返すことはしない。タクシーは多く通っているが、乗ることもしない。一人は「風邪引くの嫌だな」と呟いて、冷たい手を脇の下にねじ込む。もう一人は「風邪引きたくないね」と言い、別な話題を探す。あとの一人は何も言わない。歩いてるうちに、見覚えのある道に出た。やっと室内に入り、自動販売機の「あたたか〜い」を探すが、「つめた〜い」しかない。給湯室では湯沸し機はあるが、やかんすらない。三人はソファーに座り、テレビのスイッチをいれ、足を伸ばし、駄菓子とさきいかを食べた。よく噛まなかった。 ソラシラズ