お弁当の時間

お弁当の時間、月に1度くらいの割合で父親がお弁当を作る日がありました。家を出るとき、「ほら、持っていけ。」と言われると「ありがとう」と返事はしますが、嬉しくはありません。そしてお昼。その日だけは誰にも見られないように食べます。なぜなら、お父さんの作ったお弁当は臭いのです。臭いことに気づいた時は、鮭の粕漬けのせいかな?と、その場は切り抜けましたが、次の卵焼きもなんだか変な匂いがするのです。匂いは日により違いますが、大抵は台所の引き出し、もしくは床下収納の匂いがしました。母親が作ると、まったく匂いはしません。父親はその日、自分が作るとわかると気合いを入れ、早起きまでします。父親が作るとき、信じられないくらいはずれはなかったので、父親の弁当を食べる時でもクラスメイトと食べるようになり、「今日、弁当が臭いんだよー」とクラスメイトに嗅がせ、「あっ、くせぇ!」と面白がるので、「クサメシ」と名づけ、友人に「今日、クサメシ?」と共通の話題にも上がるようにもなりました。父親にはなぜ臭い弁当が作れるのか?を聞くこともないでしょう。しかし、クサメシは妙に臭いのです。