夕焼き

小学生の頃、家庭科の先生は口に泡を溜めて、授業を行っていた。授業が進むにつれ、泡の大きさは点から円になってくる。大きさは仁丹大。そのことを席が近い、クラスメイトに伝えると、「そうそう。僕は前から気づいていたよ」と返事。口泡仁丹を二人もしくは三人でじっくり観察することになる。授業中なので、ノートをとりながらの観察となるが、理科のどの観察より真剣に行う。そして、先生の口泡はみるみるうちに大きくなり、10〜12m離れた位置からも確認できるようになっていた。先生の口泡は両方。観察にも気が抜けなくなってきた。そして、実習の時間に差し掛かり、先生が教室の席を回りだした。もう二人〜三人の近くに来ることがわかると、観察を中断し、二人〜三人は下を向く。会話をしようとしない。わからないところも聞こうとしない。実習にまじめに取り組んでいる振りではなく、先生からは悪臭がするからだった。それが、口臭だったのか口泡からだったのか、今となっては知ろうともしない。その後なんとなく一週間が過ぎ、次の家庭科の時間も口泡は点から始まるのだった。放課後、二人〜三人は桜の木によじ登り、窓から放送室に侵入したのだが、思ったより何もなかったので、ジャンケンをして機材のスイッチを切り放送室を出た。保健室の前にはたばこの害で健康な肺と比べた黒い肺のポスターが貼ってあった。二人〜三人はポスターの前でジャンケンをした。