第3話

「今日こそユニットバスに入るわよー」
とたかたさん。
「あなたにこのユニットバスに入ることができるかしら?」
とたかださん。
たかたさんはユニットバスのドアノブに手をかけ包みこむように握りしめ左に回転を加えました。
「あれ?」
たかたさんがドアノブを左に回してもユニットバスの扉は開きません。腕を組み、たかたさんをそばで見ていたたかださんは
「左に回したって扉は開かないわよ!」
と右腕を上に腕を組み直しました。
「そういうからくりね」
と何か気づいたことがあるのか右腕の筋肉の使い方を変えて左にドアノブを回しました。 ついでにザザッ、シュ!ザザッシュー!という擬音を繰り返し唱えました。
それを聞いたたかださんは
「何か深い事情がありそうね」と思い口に黙っていると
「隠すわよ」
「見せなくていいわよ」「見せなくてはならねぇ」
「隠しておけ」
「隠しておけるかってんだっ!だっつ!ダッツ!」
「カタカナで言われてもわからないわよ」
「そうね」
「そうね」
「右じゃないかしら?」「いいや。左よ。」
「いいわよ。左で。もう決めたんだから」
「右よ。あるいは左よ。」
「あるいはぁ?あるいは、でドア開いたらこんなやりとりしなくても済んだじゃない!」
とうとうたかたさんは怒ってしまいました。
「なぜあなたユニットバスに入りたいの?」
「お宝があるからよ」
「いやん。エロいやらしい!」
「からかうなら午後からにして。」
「悪かったわね」
「そうね」
「悪かった」
「わかっている」
「ユニットバスに入れないとなるとこの先どうなるか」
「まず掃除が出来ないわね」
「それとユニットバスかどうか確かめられないわね」
「ユニットバスってある意味、棺桶みたいよね」
「あと中にあるもの溶けてるようにも見えるよね」
ガチャガチャ
「ひっ、」
「誰か入ってるの?ねぇ」
「聞かれてもわからないわよ」
「誰よ!」
ガチャガチャガチャガチャ!
「いい加減にして」
「してっ!」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
「うん?まさか。」
「誰かわかったの?」
「もしかして出られないじゃないかしら」
「そんなことないわよ。鍵がかかってるだけだもの」
「向こう側から考えたらこっちが閉じ込められているのよ」
「どうして?」
「考えたらよ」
「考えたらね」
「しかし、まぁユニットバスに入ろうなんてね」「私達、二人で入るつもりだったのかしら」
「嫌よ。あなたに体毛見られたくないものう」
「ダジャレ?」
「察して」
たかたさんとたかださんはお互いに笑いかけ、部屋を出ました。そしてたかたさんは5階に、たかださんは8階に向かいました。部屋に帰った二人はそれぞれのユニットバスに入り、お湯を浴びました。
8階「お湯よー!合羽かぶりながら浴びるわ!これなら濡れないはず」
5階「お湯をシャワーで浴びるわ!」
8階「ほら、浴びなさい!!念願のお湯よ!」
5階「熱(ホット)」
8階「うーん、シャワーが弱いのかしら」キュッと8階は蛇口をひねりシャワーの勢いを強くしました。